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九州支部 平成29年度 現地研究会開催報告

九州支部では、平成29年11月10日(金)・11日(土)・12日(日)、鹿児島県屋久島において平成29年度現地研究会を開催した。

今回の現地研究会では、鹿児島県立博物館の多久島徹さん、屋久島地学同好会の中川正二郎さんのご協力の元、屋久島野外活動総合センターの市川聡さんをガイドとして数々の興味深い地質サイトの訪問が叶った(図1)。

図1 屋久島における巡検地図

 

1993年に日本で最初に世界遺産登録された屋久島であるが、屋久杉を代表とするこの島の豊かな植生・景観は、その特異な地質的要因によって産み出されたものであるらしい。円い屋久島をつば付き帽子に例えると、帽子中央の山岳部は花崗岩から成り、海に面したつば部分は堆積岩から成るという。花崗岩は直径20 kmほどもあり、海面から2000 mも突き出すが、海面下にはもっと巨大な花崗岩が隠れていると考えられる。天然の屋久杉は、標高600 m以上の花崗岩上で生育し、その限られた栄養でゆっくり育つからこそ、年輪の幅が緻密で長寿をもたらすようである。

まず、千尋の滝では、そのスケールの大きい屋久島花崗岩の大岩盤を目の当たりにし(図2)、また、白谷雲水峡では、正長石の大きな結晶を多数含む、巨大な花崗岩の数々を足元に観察することができた(図3)。

図2 屋久島花崗岩の大岩盤と滝(千尋の滝) 図3 正長石を含む屋久島花崗岩(白谷雲水峡)

 

田代海岸の露頭では、町の天然記念物である枕状溶岩が(枕を積み上げたような明確な堆積構造)が見られる。一般に枕状溶岩は海底火山で玄武岩質溶岩が噴出したものと言われるが、これらが長い年月をかけて太平洋プレートの移動により屋久島の海岸に運ばれてきたものとされる(図4)。

図4 枕状溶岩露頭(田代浜)

 

落ノ川(おとすのかわ)では、海岸露頭の崖を足元に注意しながら上り下りし、石英斑岩岩脈の先端まで辿り着いた(図5)。ここでは高温石英や正長石の小班晶が観察できる。ここから地下で繋がっているという早崎鉱山跡をその直後に訪れた。早崎鉱山では、第一次・二次世界大戦時の需要によりタングステン(鉄マンガン重石)生産が最盛となったという。その後、朝鮮戦争勃発で再度開発が始まったものの、安価な輸入品に圧され、その生産を終えている。今回、少なくとも3カ所の坑口を見つけることができた(図6, 7)。

図5  石英斑岩岩脈(落ノ川) 図6 早崎鉱山跡に残る坑口の1つ 図7 早崎鉱山跡に残る坑口の1つ

 

最後に、タングステン、自然金、ホセ鉱A、ビスマス、ユーリチン等が産出される梅峡鉱山跡を訪ねた。国有林の中に位置し、深く草木で覆われ湧き水で滑りやすい道なき山道を掻き分けて登ると、途中の坑口の周囲には白いケイ酸塩鉱物のズリがごろごろ転がっている(図8)。割ってみると自然金の粒を発見することもあるという。更に登り詰めると、もう一つの坑口にまで辿り着いた(図9)。雨をぬって多少体を張った現地研究会であったが、地質的角度からの屋久島巡りは大変ユニークで興味深く、満足するものであった。

図8 梅峡鉱山跡の山道に転がるズリ 図9 梅峡鉱山跡に残る坑口

 

(文責:九州支部庶務幹事 九州大学・沖部奈緒子)