_2023年(令和5年)より,前委員長である島田英樹教授(九州大学)から本部門委員会の委員長を引き継ぎました熊本大学大学院先端科学研究部(工学部土木建築学科)の佐藤です。わたくしの専門は岩盤工学をベースにしており,多孔質岩石内の流動や拡散をX線CTスキャナーで可視化・評価する研究を行ってきました。また,日本における大規模な露天掘り石灰石鉱山で運用されている立坑の安全な運用に向けて,立坑の閉塞現象を模型実験により再現し,また,個別要素法による解析により検証してきました。
_採掘技術とは,多くの皆さんがご存じの通り鉱物を鉱床から掘り出す技術のことであり,資源開発をベースとした技術であります。資源とは,我々人類が豊かで便利な生活を送るためには必要な不可欠であり,持続的な社会の発展のためには資源をより効率よく採掘していく技術進歩も必要不可欠です。一般に日本は資源に乏しい国と称されていますが,ご存じの通りインフラの基となる石灰石は自給 100% の鉱物資源であり,まだまだ埋蔵量も豊富です。これまでも技術者・研究者の皆様のたゆまぬ努力により,採掘技術を日々発展させ,石灰石の安定供給により大きく社会に貢献して参りました。これは今後数十年に渡って同じように引き継がれるものと考えております。一方,資源採掘技術に携わる技術者・研究者も高齢化をたどっており,これまで培ってきた技術の伝承も次第に困難になっていくのではないかと考えております。本部門委員会には企業の技術者の方が多く参加していらっしゃいますし,少ないながらも大学の研究者も参画しております。この部門委員会での交流や活動が,将来の持続的な採掘技術発展に貢献できることを期待しております。また石灰石のみならず,今後必要となるレアアースの開発,メタンハイドレートの開発など,まだまだ未開発の分野も多くございます。このような新領域にも本部門委員会の活動が活かされることを期待しております。
_さらに,より若い世代の技術者育成も本部門委員会の重要な役割であると考えております。資源・素材学会における春季・秋季大会時に企画する講演会は,将来有望な技術者達の研鑽の場になっていると考えております。また,残念ながらコロナ禍中は開催を見合わせていた学生の鉱山見学会も,実際の現場に触れて意識を高める良い機会であると考えております。私の研究室からもこの見学に参加した学生も多いですし,研究室でも鉱山見学を実施しております。このような見学会に参加した学生のほとんどが,現場の様子を目をキラキラさせながら語ってくれます。石灰石鉱業協会さま,各鉱山さまには今後も開催に向けて是非ご協力頂ければ幸甚です。
_以上のように,技術の持続的な発展と人材育成の両面から,本部門委員会の活動をご支援頂きたく存じます。

採掘技術部門委員会 委員長 佐藤 晃